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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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セッションのルーツは台所?

2014.01.08 13:03|アイルランド音楽豆知識
先月の記事で、「セッションとは何か」というタイトルでセッションの一般的な概要を述べてみました。

今日は、アイルランドにおいてそもそもセッションとはどのように生まれたのか、そのルーツに触れてみたいと思います。

フィークルに住むブロードキャスターのポーラ・キャロル(Paula Carroll)が、数年前に地元のラジオ局クレアFMで「The Kitchen Sessions」というタイトルの特別番組を持っていたことがあります。

地元クレアの豊かな伝統音楽を支える人々やミュージシャン、ダンサー、歌い手などを訪ねてクレア各地を回り収録された番組は、そのほとんどが個人の家のキッチンが舞台というユニークなものでした。
番組収録時にはビデオ撮影も行われており、番組の動画を見れるようになっています。



こちらをご覧になっていただけると雰囲気が伝わるのではと思いますが、ミュージシャンたちもダンサーたちも台所という小さな空間にひしめき合って、音楽を楽しんでいます。
個人宅のキッチン(必ずしもキッチンとは限りませんが)という極めてプライベートな場所で、地域の人々が寄り集まって行われる宴。
これこそが「セッション」の原型であり、番組のプロデューサーであるポーラの趣旨もこのキッチンセッションの雰囲気を再現することにありました。

第一回目の「今月の人物」でマイケル・コールマンを取り上げましたが、コールマン家は当時この地域の音楽シーンの中心であったと書きました。このコールマン家のように、音楽の盛んなアイルランドの地域には音楽やダンスを楽しむ集いをホストする人々がいました。彼らの家には近所の住人や地域の名手などがひんぱんに集まり、夜通し音楽が行われていたといいます。

これが、今でこそ「キッチンセッション」とか「ハウスセッション」という名で知られるものです。むろん、当時はこんな名称さえなかったはずで、地域の風習としてごく当たり前に存在していたものと思われます。
定期的に催されるものもあったはずですが、例えば誰かがアメリカなどへ移民する際、誰かの帰郷の際、また地方を演奏してまわるトラベラーズの音楽家がその地域を訪れた際などにも、このようなセッション=音楽の集いが行われていたようです。

キッチンセッション
[個人宅のキッチンで音楽に合わせて踊るダンサーたち]

これが、パブという公共の場所にとって代られたのはそう昔のことではなく、1960年代頃と言われています。パブセッションの歴史はせいぜい50年そこそこといったところでしょうか。アイルランド音楽の長い歴史の中で見れば、近代に入ってからの比較的新しい現象と言えます。
アイルランドで「パブ」と言えば「パブリックハウス Public house」の略ですが、つまりセッションは「個人の家(プライベートハウス」から「パブ(パブリックハウス)」へと場所を変えていったのです。

懐古主義的に「パブで演奏する音楽は、見知った友だちや親戚の家でのセッションの楽しさにはかなわない」と嘆くお年寄りもアイルランドにはときどきいますが、パブでのセッションがハウスセッションの要素をすべて変えてしまったわけでもなさそうです。それどころか、アイルランドにおけるパブセッションをよく観察していると、そこはまさにその地域に住む人々にとっての社交の場であり、地域に残る音楽や歌、ダンスやストーリーを共有し、育む場であることが分かります。

一方で、アイルランドにある都市や比較的規模の大きな町でのパブセッションにおいて、このようなハウスセッションの名残を感じ取ることは難しくなっています。さまざまな地域からミュージシャンたちが集うセッションは今やコスモポリタンで、外国人の姿も目立ちます。
セッション自体も、本来の「地域の人々やミュージシャンたちが楽しむ集い」というよりも、ショー的な要素が意識的に取り込まれたり、パブの店主にとってはお客を呼び込むアトラクションとしてセッションが存在していることが多いのではないでしょうか。

現代の波に乗るアイルランドという国としての変化、観光産業国としての音楽の在り方、情報網の発達と経済的な豊かさがもたらした変化によって、アイルランド音楽は今や世界に向けて扉を開いています。
こうした時代背景に伴い、アイルランドにおけるセッションの姿も日々変わりつつあるようです。


望月えりか

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