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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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アイルランド音楽の地域性って何だろう

2014.12.05 09:23|アイルランド音楽の地域性
アイルランド音楽の世界に入ると、比較的初期の段階で、ドニゴールスタイル、クレアスタイル、スライゴミュージック、ケリーミュージック、といった言葉を耳にするようになります。

それによると、どうやらドニゴール(アイルランド北部の州の名)という地域にはその土地の演奏スタイルがあるらしい。アイルランド音楽とは実は一言でくくれるものではなく、コーク州、ロスコモン州、ケリー州など地域によって音楽の特質が違うらしい、ということのようです。
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具体的にどういうことなのでしょうか。

ひとつは演奏スタイルです。演奏のスピードや装飾音のつけ方、リズム、アクセントやイントネーションといった音楽の表現方法が異なります。
好まれる曲もずいぶん違います。実際には北アイルランドのアントリムなどで定番の曲を、ゴールウェイのミュージシャンに聴かせても「知らない」と言われたり、ケリーのポルカをメイヨーでやっても誰も一緒に演奏してくれなかったり、ということが起きます。

デニス・マーフィー
[ケリー出身のフィドル奏者、デニス・マーフィー(Denis Murphy)]

使われる楽器の構成も、地域によって違ってきます。あそこはもっぱらフルートの州という地域もあれば、ここはフィドル一色、コンサーティーナはクレア州、というようにその地域で好まれる伝統楽器があるようです。

そんなわけですから、例えば何の情報もなく誰かのアルバムを試聴した場合など「この人はロスコモンの人じゃないかな」とか、ラジオでフィドル奏者の演奏が流れて「この人は絶対にドニゴールの人だね」ということが分かってしまったりします。

同じアイルランド音楽なのだから、みんなが集まれば楽しくセッションできるというのは間違いで、極端な例では共有できる曲のレパートリーが少なかったり、演奏するスピードが速すぎたり遅すぎたりというような問題が出てきて、かえってフラストレーションがたまるようです。

では、地域の異なるミュージシャン同士が共演を楽しむことは、まったく不可能でしょうか。

アイルランドには32のカウンティー(County 州とか県などと訳される)がありますが、州ごとに異なる地域スタイルがあるかのようにうたわれることもあります。しかし実際にはそんなものは存在せず、アイルランド音楽の地域性とは、あくまで「傾向としてそうである」という程度に理解をとどめておいた方がよさそうです。

アイルランドでは地域を越えたミュージシャン同士の交流は当たり前ですし、一部のごく保守的な人々をのぞいて、ほかの地域の音楽家たちと交わることに抵抗を感じるような人はいません。
近年では人々の往来も頻繁で、大学や就職のために出身地とは異なる地域に住むうちに現地の音楽に影響を受けたり、地域を越えた音楽は今やどこにいても入手可能な時代です。
私はたまたまクレア州東部に暮らしていますが、私の周囲でもゴールウェイやティペラリー、リムリックといった隣接する州のミュージシャンたちが日常的に行き交っていますし、クレアのミュージシャンたちがコーク、ケリー、ゴールウェイ、メイヨーなどの音楽フェスティバルの常連だったりもします。

また、最近では例えばダブリン人がルーツを求めてドニゴールやケリーなどの音楽スタイルに傾倒し、結果自分の演奏に取り入れるというような例もあります。

地域性がより堅固に守られていたであろう一昔前の時代においても、ラジオやレコーディングといった媒体を通して、クレアのフィドル奏者がスライゴの音楽に傾倒したり、ドニゴール特有の曲がアイルランド南部に渡って演奏されたり、といったことが起こっていたようです。

イデル・フォックス&ニール・バーン
[クレア出身のコンサーティーナ奏者イデル・フォックス(Edel Fox)とウォーターフォード出身のフィドル奏者ニール・バーン(Niell Byrne)]

一方では、「私はロスコモンスタイルのフルート奏者です」とか「これはゴールウェイ音楽のアルバムです」というように、ミュージシャン自らが音楽をカテゴリー化することにより、コマーシャル活動に利用する傾向があります。
テレビやラジオなどのメディアもこうしたカテゴリーがあると便利なので、つい乱用してしまうようです。

アイルランド音楽がもともと自分たちの文化でない外国人にとっても、これは一見とても簡単にアイルランド音楽が説明されているように見え、言葉をそのままに受け取りがちです。
アイルランド人でさえ、アイルランド音楽を地域別にカテゴリー化して理解する人が増えているように感じます。

何事もそうですが、きれいにカテゴリー化されたものには注意が必要です。
アイルランド音楽における地域性の輪郭は非常にあいまいであり、確固たるボーダーラインがあるようなものではないからです。

アイルランド音楽における地域性を理解するのに最も分かりやすい方法は、私たちの言葉のアクセントと同じようなものであると捉えることかもしれません。地方には、その地方独特の方言があります。アイルランド音楽もこれと同じで、その地域ならではのスタイルが存在します。
言葉のアクセントは、世代によって、またその人のバックグラウンドによって、強かったり気がつかなかいほどであったりします。
異なる地域の者同士、まったく会話が成り立たないかといえばそんなことはむろんありません。アクセントが強すぎれば相容れない部分は増えますが、それでも人は分かり合い、共通項を発見していくものではないでしょうか。
違いを越えて理解し合える部分が大きければ、かけがえのない音楽仲間にもなり得ます。

カテゴリー化に惑わされず、広い視野を持ってアイルランド音楽全体を見つめていくと、アイルランド音楽における地域性が自然な形で見えてくるのかなと思います。


望月えりか

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