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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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今月の人物 vol.14 パディー・クローナン(Paddy Cronin)

2014.05.15 07:10|今月の人物
今からほぼ2か月前の2014年3月15日、パディー・クローナンが亡くなりました。88歳でした。
この訃報はアイルランド音楽界にとどまらず、アイルランドの全国ニュースでも報道され、クローナンというフィドル奏者の死の大きさを実感させられました。

久し振りの投稿となるブラックバードミュージックの「今月の人物」では、この偉大なフィドラーへの追悼の意味も込めて、パディー・クローナンを特集します。

パディー・クローナン2

パディー・クローナンは、1925年、ケリー州のReaboy(リーボーイ)という村に生まれました。リーボーイはコーク州との境に近く、シュリーヴルークラの本場の地です。

シュリーヴルークラ(Sliabh Luachra)とは、アイルランド語で「イグサの山」を指し、この地域一帯を指す名称です。
シュリーヴルークラはアイルランド音楽の伝統が濃く、俗に言えばポルカやスライドといったアイルランド南部の音楽を代表する、聖地ではないでしょうか。
実際にこの土地を訪れてみると、驚くほど静かで土地も貧しく(イグサは不毛な土地に育つ草である)、ここにそんな色濃い音楽の伝統が息づいていたとは信じがたいほどです。

パディー・クローナンは、この地域で幅広く音楽を教えたフィドルの巨匠、ポードリッグ・オキーフ(Padraig O'Keefe)からフィドルを習った最後の生徒の一人です。

1949年、クローナンが20代の頃、このブログの「今月の人物」でも過去に取り上げたパイパーでブロードキャスターのシェイマス・エニス(Seamus Ennis)によって、クローナンの演奏が初めて録音されました。この貴重なレコーディングは、今もアイルランド伝統音楽保存協会(ダブリン)に保管されています。

クローナンはこの録音終了後、同年の暮れにアメリカへ移民として旅立ちます。

クローナンのアメリカ生活はシカゴから始まりますが、ここで出会った女性と結婚し、子どもを6人もうけます。間もなくボストンへ移ったクローナンは、この大都会に根を下ろし、1950年代から70年代にかけてのちに名盤となるレコードを7枚リリースします。

その見事な腕前からアイルランド出身のフィドル奏者としてボストン界隈では言わずと知れた存在となったクローナン。しかし、本職はペンキ屋でした。
クローナン自身、「私は一度もお金を稼ぐために音楽を演奏したことはない」とのちに明言しています。

母国アイルランドで催される音楽祭に合わせ、ほぼ毎年帰郷していたクローナンは、大小のセッションにもよく現れるなじみの顔だったと言います。
そして1990年代初頭、クローナンは40年間過ごしたアメリカ、ボストンからアイルランドへ戻ります。

40年間、ボストンというアイルランド移民がひしめく大都市で音楽に浸ったクローナンは、ここで多くの音楽家たちと出会いました。特に「今月の人物」でも既に取り上げてきたアイルランド移民、マイケル・コールマン(Michael Coleman)ジェイムス・モリソン(James Morrison)パディー・キローラン(Paddy Killoran)といったスライゴ出身のフィドル奏者たちと、クローナンは深い親交がありました。
クローナンは、スライゴというケリーからは極めてかけ離れた土地で育まれた彼らの演奏スタイルに衝撃を受け、始終魅了されていたのです。ケリーの故郷から出なければ決してめぐり合うことのなかった音楽。クローナンのこの幸運は、アメリカという移民大国が与えたギフトと言っていいでしょう。

クローナンは、シュリーヴルークラのポルカやスライドという自らのレパートリーに加え、リールやジグはスライゴ流に装飾を巧みに施し、見事なスピードでもって演奏しました。それはスライゴ出身のフィドル奏者たちをもしのぐ腕であったと言われています。中には「マイケル・コールマンのようにフィドルを弾けるのはパディー・クローナンだけである」と評価する人までいたほどです。

どこまでも繊細な装飾。新鮮でいて軽快。そして美しいほどに悲しく、時代を超越したかのようなパディー・クローナンの音楽の世界。
ひとつの地域の演奏スタイルに固執せず、極めてユニークで個性的なスタイルを確立したことに対する、アイルランド音楽家としての評価はここでも最高のものです。

さて、クローナンは、自らのアイルランド音楽を言葉にして語ることで、多くを伝えた人物でもあります。

パディー・クローナン

今回クローナンを取り上げた理由も、彼の音楽に対する姿勢や投げかけた言葉の中に共感するものが多くあり、また私たちがここから学ぶべきものがあるように感じたためです。
クローナンが残した語りやインタビューからは数々の名言が生まれ、今でもアイルランド音楽の世界で語り継がれています。

下記はクローナンの名言の一部です。

「いい音楽がほしかったら、いいリスナーを見つけないといけないよ」

「私はいつでも昔から伝わる演奏スタイルに従ってきた。それはこれからも変わることがない」

「私は時を経た今でも、家という空間がフィドルを演奏するのに最も適していると思っている。家のキッチンや暖炉のそばで、多くの人々と共に座って過ごすことほど贅沢なことはない。一人の時でさえ、私はここに座り、自分のためだけにフィドルを弾くことが大好きなのだ」

また、商業的に成功を収めている某ミュージシャンから「いくつか曲を教えてほしい」と頼まれたクローナンは、「今あんたがやってるようなくそったれの音楽を、いつまでもやっているがいいさ。本当の音楽をやろうと思ったら、金は稼げないんだからね」と返した、という話も有名です。

こちらの映像で、若かりしパディー・クローナンの素晴らしい演奏を聴くことができます。



シュリーヴルークラからは、前述のポードリッグ・オキーフ(Padraig O'Keefe)やデニス・マーフィー(Denis Murphy)など、アイルランド音楽の世界では欠かせない重要人物が数多く輩出されています。
ブラックバードミュージックの「今月の人物」では、ぜひこれらの音楽家たちも取り上げていきたいと思います。


望月えりか

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