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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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パブセッションにはホストがいる

2014.10.21 02:17|アイルランド音楽豆知識
数年にわたりアイルランド音楽を学んでいる、一人の友人がいます。

彼女は音楽にとてもパッションのある人で、彼女の言わんとしていることには私もうんうんと頷くばかり。

先日、彼女とのやりとりの中で「ホストのいないセッション」という一文があり、「えっ」と驚きました。

ホストのいないセッションとは、一体どういうことなのでしょう。

また、そもそもセッションのホストとは何でしょうか。
(セッションについてはこちらの記事をご覧ください→「セッションとは何か」)

通常、アイルランドのパブで行われるセッションにはホストと呼ばれるミュージシャンが2人ないし3人います。
彼らはパブのオーナーから支払いを受けてセッションを取り仕切る立場にある、実力派のミュージシャンたちです。

一方で、パブセッションにはこのホストたちのほかに、セッションに参加するために集まってくるミュージシャンたちがいます。
「セッション」と言われるものにはオープンもクローズドもなく、基本的には誰もが楽器を持っていつでも参加することができます。

フィークルフェスティバル2013 from 真衣さん (15)
[クレア&ブリーダ・ケヴィル姉妹(Claire & Breda Keville)がホストするセッション]

セッションにおけるホストの役割は単純明快です。彼らこそが、そのセッションを仕切り、リードしているのです。
逆の言い方をするならば、セッションに参加しているそのほかのミュージシャンたちが、ホストのミュージシャンたちを押し切ってリードをしたり、勝手にセットを演奏しはじめる、ということは一部の例を除いてタブーとされています。

一見、寄り集まった仲間で和気あいあいと進めているように見えるセッションですが、実際には「ホスト×そのほかの参加ミュージシャンたち」という構図が必ず存在しています。

誰もが参加できるのがセッションですが、ホストの存在を無視して誰もが均等に曲を出していい場ではありません。

ホストのいる一般的なセッションでは、そのほかの参加ミュージシャンたちはホストについていくことでセッションを楽しみます。リーダーとなるホストミュージシャンたちは、ほとんどの場合それだけの腕のある実力派です。
そのほかの参加ミュージシャンたちは、ホストにくっついていくことで多くを学ぶのです。

アイルランドでは、ときどき初心者のミュージシャンたちがパブなどに集まって、一人一人がセットを出すなどしながら進行していく、ビギナーズセッションのようなものが開かれています。それこそ輪になって、隣の人から順番に演奏できる曲を出し、曲を知っている人は一緒に参加するというスタイルです。
しかし、これはセッションというよりは練習会に近く、パブ側も主催者に場所を提供しているだけで、音楽を聴衆に披露するものではありません。時には、このセッションに楽器を持って参加するビギナーの人たちが主催者にいくらか参加費を払う場合もあるほどです。
こうなってくると、音楽のクオリティーは最初から存在せず、ホストのいるセッションとは性格も違うので比較のしようがありません。

また、セッションのホストによってはやたら参加ミュージシャンに気を使って「何か始めたら?」と何度も「そのほかの参加ミュージシャンたち」に機会を与えようとするミュージシャンもいます。確かに参加ミュージシャンたちにとってはいいチャレンジになるのでしょうが、あまりにこれが多いと私などは退屈してしまうこともあります。

あなたはなぜ、そのセッションに参加しているのか。

それは自分の弾ける曲を見せびらかしたいからではありません。
そのホストミュージシャンの音楽にリスペクトがあり、彼らの音楽から学びたいものがあり、彼らの音楽についていくことで楽しみたいと感じているから、参加しているのではないでしょうか。

アイルランドでも、フェスティバル期間中など特別な時期において、ホストのいないセッションや、ホストがいてもそのほかの参加ミュージシャンたちにすっかり占拠されてしまったセッションを見かけることがあります。
そんなセッションで演奏される音楽は、残念ながらまとまりのある音楽とは言い難く、いい音楽を聴ける機会にはなり得ません。

本当に良い音楽を、その場にいる人々で一緒に作ろうと思えば、ホストとなるミュージシャンたちの存在は不可欠なのではないでしょうか。

フィークルフェスティバル2013 from 真衣さん (40)


望月えりか

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テーマ:アイルランド音楽
ジャンル:音楽

アイルランド音楽に伴奏は要らない?

2014.06.18 14:12|アイルランド音楽豆知識
先日、ごく親しい友人らとアイルランド音楽の話に興じ、「アイルランド音楽における伴奏の是非」という話題で盛り上がりました。

友人の一人はアメリカ人のフィドル奏者です。
アメリカの小さな町でフィドルを中心にアイルランド音楽を教えるクラスを運営し、アイルランドから来るミュージシャンたちを迎えてのコンサートなどの企画も行う彼女は、長きに渡りアイルランド音楽を見つめてきた人物であり、幅広くアイルランド音楽を聴き込んでいる、まさにアイルランド音楽に人生を捧げる人物です。

そんな彼女が「最近、伴奏なしの、メロディー楽器だけでの演奏が面白くて仕方がない」と言います。

それと同時に、「伴奏が入ると、メロディー楽器奏者としての表現力の範囲が狭められる気がする」とも言います。

パットもすかさず「よく分かるよ。伴奏者がいると窮屈というか、その音楽の形が固定されてくるよね。伴奏者がその音楽のムードを勝手に作ってしまうと、こちら(メロディー楽器奏者)の意図してない方向に行ってしまったりしてね」

「そうなの。伴奏者がいないだけで、こんなに自由に弾くことができるんだ!っていうことが、今はとても楽しくて、もっと突き詰めていきたいなと思っているのよ」

彼女の夫はブズーキ奏者で、それもかなりの腕の持ち主なのですから、彼女の話には説得力があります。

続けて、「アメリカでは、アイルランド音楽には伴奏がなくてはならない、と思い込んでいる人たちが多い」とも言います。

確かに、アイルランド音楽に伴奏を初めてつけたのは何を隠そう、アメリカでした。
マイケル・コールマン(Michael Coleman)やジェイムス・モリソン(James Morrison)といったアメリカにおけるアイルランド移民の音楽家たちのレコーディングにともない、「メロディーだけでは何かが欠ける。伴奏を入れたらいいのでは」と思いついたのは、当の音楽家たちではなく製作者側、つまりアメリカのレコード会社の人間たちでした。

ピアノ、ギターに始まったこの「伴奏者」という新参者の存在は、時が経つにつれて肥大し、アイルランド音楽史のバンドブームと一体化してからは、市民権を得るかのごとく普及しました。
今やアイルランドのパブにおけるセッションでも、こうした伴奏者の姿を見かけるのは当たり前のこととなりました。

「それがね、フィドル奏者のアントン・マクガウアン(Antóin Mac Gabhann)のワークショップを受けた時に、アドバイスされたのがきっかけだったの。『伴奏なしでしばらく演奏してみなさい。そうすれば、フィドル奏者として違ったアプローチができるようになるはずだから』ってね」

「結局、アイルランド音楽はメロディーが主体の音楽で、メロディー楽器でフレージング、イントネーションやリズムなどすべてが表現される音楽。そこに伴奏者が何か加えられるとしたら、奏でられるメロディーを理解した上でそれを後押ししたり、メロディーの持つリズムの力をサポートしたりとか、それぐらいではないか」(パット)

どれだけ伴奏に頼ったアイルランド音楽を演奏するか。このような伴奏楽器にかかる比重は、今やさまざまに変化しているようです。
ケーリーバンドのようなダンサーを躍らせることを専門としたバンドには、ほとんどの場合ピアノやキーボードの伴奏が入りますし、アレンジを売りとしたバンド型のグループにも、伴奏楽器は欠かせないようです。
メロディー楽器奏者と伴奏楽器奏者のデュオ、という形も多いのではないでしょうか。

いずれにしても、メロディー楽器奏者が本来の役割を果たせず、至らない点を補うために伴奏者がいるアイルランド音楽ほど悲しいものはありません。
例えば、伴奏者がいなくともメロディー楽器奏者の持つ力強いリズムだけで、問題なくダンサーを躍らせることができるのがケーリーバンドですが、これは同時にアイルランド音楽の本来の姿ではないでしょうか。

「アイルランド音楽は、メロディー楽器が主体で演奏されるものである」という基本的な形は、今後も変わることはなさそうです。


望月えりか

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ジャンル:音楽

アマチュアが支えるアイルランド音楽

2014.03.05 08:50|アイルランド音楽豆知識
アイルランドのダンス音楽は、貴族など上流階層を中心に発展した宮廷音楽ではありません。
大衆音楽、庶民音楽、民俗音楽とさまざまな呼称があることと思いますが、詰まるところの「普通の人々による普通の人々のための音楽」がアイルランド音楽ではないでしょうか。

昔は、アイルランド全国の村や町といった自分たち各々の地域で、家族や親せき、近所の者同士が集まって音楽が演奏されていました。パブなどの公共の場がなかった時代には、主に人々の家で音楽とダンスの集いが行われていたことは、こちらの記事で触れました。そこには、音楽を演奏する者、ダンスをする者、歌い手、それにその場を楽しむそのほかの人々がいました。
音楽を演奏できるということ自体に、それ以上の意味はありませんでした。彼らにとって楽器が演奏できることは、何も特別なことではないのです。

この「アイルランド音楽のかたち」とでもいうようなものは、21世紀に入った今でも基本的には変わっていません。
例えば、アイルランドに来るとごく普通の人たちが、実は素晴らしい演奏をする音楽家であったりします。
つまり、プロではないアマチュアの音楽家たちがアイルランドにはひしめいているのです。

彼らは他に本職を持っています。小学校の教諭であったり、店のスタッフであったり、オフィスに勤めるビジネスマンから看護士、農夫、営業マン、配管工など職種はさまざまです。

しかし、そんな彼らは、夜になるとパブのセッションのホストを務めているかもしれません。はたまた、縁あって海外ツアーに出かけているかもしれません。CDだって出しています。

演奏家としての腕だけ見れば、プロと何ら変わらないアマチュアたちがごまんといるのがアイルランドです。
「プロ=トップクラス、アマチュア=中級」という公式が当てはまらないのが、アイルランド音楽の世界なのです。

彼らは演奏家としてはアマチュアですので、ステージ向けのパフォーマンスや凝ったアレンジとは縁がありません。音楽で食べていく必要がないので、基本的には伝統的なスタイルに忠実です。

そういう意味では、今も昔も、このアマチュアの音楽家たちがアイルランド音楽を支えていると言えます。

これは、アイルランド音楽の大きな特徴の一つではないでしょうか。

アマチュアが支えるアイルランド音楽。
普通の人々による普通の人々のためのアイルランド音楽。
それは一見地味で、場合によっては物足りなく感じるかもしれません。しかし、知れば知るほど、聴き込めば聴き込むほど、この音楽の奥深さ、クオリティー、豊かさが私たちを魅了してやみません。

これからも、私たちはここに視点を置きながら、日本の皆さんにアイルランド音楽をご紹介していければと思っています。


ブラックバードミュージックのフェイスブックでも過去にご紹介したビデオクリップ。クレア西部のとあるお宅にて、昔の牛舎を改築した建物の中でセッションを楽しむ人々の様子です]


望月えりか

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セッションのルーツは台所?

2014.01.08 13:03|アイルランド音楽豆知識
先月の記事で、「セッションとは何か」というタイトルでセッションの一般的な概要を述べてみました。

今日は、アイルランドにおいてそもそもセッションとはどのように生まれたのか、そのルーツに触れてみたいと思います。

フィークルに住むブロードキャスターのポーラ・キャロル(Paula Carroll)が、数年前に地元のラジオ局クレアFMで「The Kitchen Sessions」というタイトルの特別番組を持っていたことがあります。

地元クレアの豊かな伝統音楽を支える人々やミュージシャン、ダンサー、歌い手などを訪ねてクレア各地を回り収録された番組は、そのほとんどが個人の家のキッチンが舞台というユニークなものでした。
番組収録時にはビデオ撮影も行われており、番組の動画を見れるようになっています。



こちらをご覧になっていただけると雰囲気が伝わるのではと思いますが、ミュージシャンたちもダンサーたちも台所という小さな空間にひしめき合って、音楽を楽しんでいます。
個人宅のキッチン(必ずしもキッチンとは限りませんが)という極めてプライベートな場所で、地域の人々が寄り集まって行われる宴。
これこそが「セッション」の原型であり、番組のプロデューサーであるポーラの趣旨もこのキッチンセッションの雰囲気を再現することにありました。

第一回目の「今月の人物」でマイケル・コールマンを取り上げましたが、コールマン家は当時この地域の音楽シーンの中心であったと書きました。このコールマン家のように、音楽の盛んなアイルランドの地域には音楽やダンスを楽しむ集いをホストする人々がいました。彼らの家には近所の住人や地域の名手などがひんぱんに集まり、夜通し音楽が行われていたといいます。

これが、今でこそ「キッチンセッション」とか「ハウスセッション」という名で知られるものです。むろん、当時はこんな名称さえなかったはずで、地域の風習としてごく当たり前に存在していたものと思われます。
定期的に催されるものもあったはずですが、例えば誰かがアメリカなどへ移民する際、誰かの帰郷の際、また地方を演奏してまわるトラベラーズの音楽家がその地域を訪れた際などにも、このようなセッション=音楽の集いが行われていたようです。

キッチンセッション
[個人宅のキッチンで音楽に合わせて踊るダンサーたち]

これが、パブという公共の場所にとって代られたのはそう昔のことではなく、1960年代頃と言われています。パブセッションの歴史はせいぜい50年そこそこといったところでしょうか。アイルランド音楽の長い歴史の中で見れば、近代に入ってからの比較的新しい現象と言えます。
アイルランドで「パブ」と言えば「パブリックハウス Public house」の略ですが、つまりセッションは「個人の家(プライベートハウス」から「パブ(パブリックハウス)」へと場所を変えていったのです。

懐古主義的に「パブで演奏する音楽は、見知った友だちや親戚の家でのセッションの楽しさにはかなわない」と嘆くお年寄りもアイルランドにはときどきいますが、パブでのセッションがハウスセッションの要素をすべて変えてしまったわけでもなさそうです。それどころか、アイルランドにおけるパブセッションをよく観察していると、そこはまさにその地域に住む人々にとっての社交の場であり、地域に残る音楽や歌、ダンスやストーリーを共有し、育む場であることが分かります。

一方で、アイルランドにある都市や比較的規模の大きな町でのパブセッションにおいて、このようなハウスセッションの名残を感じ取ることは難しくなっています。さまざまな地域からミュージシャンたちが集うセッションは今やコスモポリタンで、外国人の姿も目立ちます。
セッション自体も、本来の「地域の人々やミュージシャンたちが楽しむ集い」というよりも、ショー的な要素が意識的に取り込まれたり、パブの店主にとってはお客を呼び込むアトラクションとしてセッションが存在していることが多いのではないでしょうか。

現代の波に乗るアイルランドという国としての変化、観光産業国としての音楽の在り方、情報網の発達と経済的な豊かさがもたらした変化によって、アイルランド音楽は今や世界に向けて扉を開いています。
こうした時代背景に伴い、アイルランドにおけるセッションの姿も日々変わりつつあるようです。


望月えりか

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セッションとは何か

2013.12.12 03:06|アイルランド音楽豆知識
このブログの中でもたびたび登場する「セッション」という用語があります。
アイルランド音楽を演奏する皆さんにとっては既におなじみの言葉ですが、初めて聞く方の中には具体的なイメージが浮かばない方もいらっしゃるかもしれません。

セッションは、アイルランド音楽を理解するうえで大切な部分を担う現象であると同時に、アイルランド音楽のあらゆる姿かたちを反映する、いわば鏡のような存在でもあるように思います。
そこで、今回の記事ではセッションの一般的な概要をお話しできればと思います。

セッションは英語の「Session」で、辞書で引くと「(会議などの)開会、会期。(ある活動の)集まり、集団活動」とあります。
英語圏に暮らしていると、この言葉は「この前○○という団体が企画したセッションに行って来ました」という具合に、「会合」や「集会」といった意味でもしばしば使われます。

アイルランド語では「seisiún」(セシューンと発音)と呼ばれますが、英語で話をしている場に突然この単語が登場することは稀で、やはり「セッション」と呼ばれるのが普通です。

セッションを一言で説明するならば、「カジュアルなセッティングにおいて、ミュージシャンたちが集まってお酒を飲んだりおしゃべりを楽しみながら、アイルランド音楽を演奏する場」となりますでしょうか。

フィークルフェスティバル2013 from 真衣さん (20)

一昔前までは個人の家で行われることの多かったこのような人々の集まりですが、現代のアイルランドにおけるセッションといえば、町や村のパブ(パブリックハウスの略ですが、今日ではお酒を飲むバーのこと)で行われるものを指すのが一般的です。

基本的には参加するミュージシャンたちが楽しむもので、コンサートやショーのようなパフォーマンスを披露する雰囲気とは異なります。
それ故、その場に居合わせた人々は静かに聴かなければならないわけではなく、邪魔にならない程度におしゃべりをしたりお酒を飲んだりして問題ありません。とは言え、アイルランドではよく音楽に無関心な客が大勢で酒を飲み、セッションを完全に無視して大声でしゃべるなどの光景は日常茶飯事です。ミュージシャンたちは当然不服なわけですが、どうすることもできず・・というシーンには私もよく出くわします。
やや語弊があるかもしれませんが、セッションとはパフォーマンスとバックグランドミュージック(BGM)のちょうど中間辺り、つまり常に静寂を保って聴くものでもなければ、完全なBGMとして無視して良い音楽でもない、といったところかもしれません。

セッションにおける聴衆、つまりリスナーの存在は不可欠です。
それどころか、演奏家とリスナーの関係を語ることこそが、アイルランド音楽の本来の姿を語ることでもあるように思います。これはまた一つの大きなテーマとなりますので、機会を改めて詳しく書いてみたいと思います。

さて、セッションはミュージシャンの仲間同士が集まり、自然発生的に始まることもありますが、たいていの場合はパブの店主が雇用するミュージシャンが2人ないし3人いるのが普通です。このミュージシャンたちがホストを務め、セッションは進行されます。
レギュラーのセッションであれば「毎週金曜日の夜9時30分~」とか「日曜日の午後2時~」という風に、たいていは曜日と時間が決まっています。

セッションは、基本的にオープンです。つまり、ホストのミュージシャンたち以外にも一緒に演奏を楽しみたいミュージシャンがセッションに参加することができます。
そのため、たいていのセッションにはミュージシャンが5人、6人、多い時には10人以上のミュージシャンがいることもあります。

参加できる楽器は限定されているわけではありませんが、一般的にはフィドルやアコーディオン、フルート、コンサーティーナなどアイルランド音楽で使用される楽器がメインです。

セッションはたいてい2~3時間休憩なしで行われます。パブを含めた公共施設での喫煙が禁止されてからは、喫煙のために外に出ていくミュージシャンたちのために、実質上セッションが休憩となる風景がよく見られますが、基本的には「前半と後半」などという考え方はありません。

また、セッションは音楽だけではありません。時にはセッションに参加しているミュージシャンによる歌が入ることもあれば、それまでバーに座って音楽を聴いていた聴衆の一人が突然歌い出すといったことも、アイルランドにおいてはよく起こります。
時には「語り部」(ストーリーテラー Story teller)と呼ばれる人による、短い話やジョークなどが入ることもあります。これもまた歌と同じで、その場に居合わせた人によって想定外に行われることが多いです。
更には、聴衆の中にダンスの出来る人が何人かいると、セッションの音楽に合わせてセットが組まれ、ダンスが始まることもよくあります。

フィークルフェスティバル2013 from 真衣さん (28)
[音楽に合わせてステップを踏むダンサー]

アイルランドには「Singing Session」(歌のセッション)といって、歌い手たちが集まって行うセッションもあります。この場合は楽器が入ることはまれで、無伴奏の歌い手たちが次々と得意の歌をうたってセッションが進行されます。

このように、セッションとは知れば知るほどアイルランド音楽らしい現象が一挙に凝縮された場です。
それ故に、アイルランド音楽を愛好する人々にとって、セッションは興味深いテーマではないでしょうか。
また、セッションに参加する際のルールやエチケットといったこともしばしば話題となり、注目されます。誰もが気軽に参加できるように見えるセッションは、実は思っている以上に複雑である、というのがその理由のようですが、同時にこれらのエチケットをすべて守っていれば大丈夫、という画一的なものでもなさそうです。
セッションに関しては、ほかにも「どのように音楽が進行されていくのか」といった素朴なテーマも気になります。
ブラックバードミュージックのブログでは、このようなセッションに関する踏み込んだ話題にも、今後焦点をあてていきたいと思っています。


望月えりか

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