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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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歌うことと奏でること

2016.12.14 21:00|アイルランドの歌
今年の秋に、縁あって日本からのお客さまのために歌のプライベートレッスンをアレンジ、ご案内する機会がありました。
えりかさんの地域の方で、伝統的な歌を教えてくださる方がいらしたらというご希望に沿って実現したレッスン。歌のレッスンをご案内&通訳というお仕事は私にとっても初めての経験でした。

アイルランドにはアマチュア、プロを問わず実に多くの歌い手たちがいます。
アイルランドに古くから残る歌をはじめ、英語で歌われるラブソングや故郷を思う名歌の数々、みんなで楽しく合唱する類のいわゆるパブソングまで、実に豊かなカルチャーが広がっています。

今回のレッスンでは東クレア出身の女性の歌い手にお願いし、英語の歌、アイルランド語の歌をそれぞれ1曲ずつ教えていただきました。
その中で、伝統音楽を学ぶ際と同じテーマを話されていたのが大変印象に残りました。

アイルランドの伝統的な歌い方の特徴とは何か、という話になった時のことです。
「これは歌う時のアプローチでもあると同時に、結果的にもそういうことなのだと思うのですが」という前置きに続いて、「アイルランドの伝統的な歌い方は、歌っているのはあなたではないということなのです」と講師の女性は言います。

「歌っているのは歌なんです。歌い手はその歌を歌わせられている、いわば道具なのです。だから大事なのはあなたではない。歌の内容、歌の美しさが大事なのであって、聴く人たちもそれを聴いているのです。ポピュラーミュージックージックなど異なるジャンルでは歌手が『私よ!私を見て!』というパフォーマンス型の歌い方になり、実際にオーディエンスもその歌手を聴くためにやってきますが、アイルランドの歌は違う。それがアイルランドの伝統的な歌い方の大きな特徴だと思います」

歌うことと奏でること

「アイルランドにおける優れた歌い手というのは、歌の中にあるストーリーや歌の持つ美しさを豊かに表現できる人のことを言います。一見ひどく地味で、ダイナミックな表現がないように勘違いされるアイルランドの歌の世界は、自分、そして自分の感情をいかに殺すか、無の存在に近づけるかということでもあるのです」

そんなお話を伺いながら、私は数年前に受けたフィドルのワークショップのことを思い出していました。

「The tune is always better than your playing.(あなたが弾いている曲は、あなたの演奏よりも常に優れている)」

「メロディーを理解する、表現する」という記事にも書きましたが、アイルランドの伝統音楽を演奏する際にも「大切なのは曲。あなたにどれだけのスキルがあるかを見せる演奏ではいけない」というアプローチを説く音楽家が多くおり、共感します。今回はアイルランドの歌の世界においてもまた、同じアプローチ法が語られる場に居合わせ、面白いなと思いました。

もう一つの共通点は「聴くことは学ぶこと」ということ。
レッスンの終わりに「ぜひCDを買って聴いてくださいね」というおすすめのシンガーたちの名前をずらりとリストアップしてくれた講師の女性。
「優れた歌い手たちを聴き込むことが大事です。彼ら(彼女ら)の歌を何度も聴いているうちにいろいろな発見があるはずです」
「現代の人もいいけれど、一世代昔の素晴らしい歌い手たちの音源をぜひ勉強してみてください。彼らが現代のすべての歌い手たちのルーツなのですから」

この「とにかく聴き込むこと」というアドバイスも、伝統音楽を学ぶ場とまったく同じですね。
自分の耳で聴いているものが自分の歌(音楽)の糧になる。ごく自然な学びの術のように思います。

アイルランドにおいて、歌うことと楽器を奏でることにはほかにいくつもの共通点があります。歌と音楽は切っても切れない関係なのです。
歌をうたわない私にとっても、わずか1時間を通訳させていただく中で多くを学んだ歌のレッスンでした。


望月えりか

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ハミングができるようになるまで

2016.02.26 09:50|アイルランドの歌
8月に私たちが開催しているフィークル村におけるミュージックキャンプのワークショップでは、課題曲を歌って学ぶ場面がよく見られます。
「ラリララーでもいいしディルリルーでも何でもいいから、声に出して曲をひたすら歌いましょう!」

この「課題曲を歌って習う」という手法は、アイルランドにおいてどの楽器のクラスでも頻繁に実践されているようです。
しかしその目的は、何度も繰り返し歌うことで曲のメロディーを頭にたたき込むという単純なものだけではありません。
講師と一緒に実際に歌うことで、その曲の全体的な流れ、旋律やアクセント、抑揚などを感じ、つかんでもらうことができます。

1st day Workshop (24)
(キーボードを使って伴奏するフィドルワークショップのアイリーン・オブライエン 2015年フィークルキャンプより)

「歌う」と書きましたが、実際には「ハミングする」、更にはアイルランド音楽でおなじみの「リルティング」に近いもののようです。
このリルティングというものはまたそれだけで面白いトピックとなりますので今回は割愛しますが、メロディーをただなぞるだけでなく、曲の抑揚そのものを自分のものにしていく作業なのではと思います。

楽器だけが巧みに演奏できて曲を口ずさむことはできないミュージシャンはいない、とも言えます。

「体にしみ込む音楽のリズム、頭に流れる旋律がまず自分の中にある。それを、楽器を通して表現するのが音楽である。それは、楽器だけを一生懸命練習しても得ることはできない」ということでしょうか。

以前、アイルランド人のミュージシャンからこんな話を聞いたことがあります。
外国人の話し相手が「この曲を知っていますか?」と質問し口ずさみ始めました。その時、アイルランド人の彼は外国人の歌い方に大変なショックを受けたのだと言います。
「ジグなのかリールなのか、それすらも分からなかった」
彼が言うには、そのリルティングがあまりにのっぺりとしたもので、すべての音が均一なおたまじゃくしのようだったのだそう。
「抑揚」というものがあまりにも無視された状態の時、アイルランドの音楽は精彩を失います。

楽器を手に取る前に。
ハミングができるようになるまでが、長い旅なのかもしれません。


望月えりか

フィークルキャンプの詳細はこちらです↓
Feakle Irish Music Camp 2016 ―アイルランド音楽を現地で学びませんか?―
2016年8月9日(火)~12日(金)日本全国より参加者を募集中です!


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