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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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「ヴァイオリンとフィドルの違い」を読む 「フィドラーは無教養?」編

2013.11.13 20:17|フィドル
数回にわたってお送りしている、『「ヴァイオリンとフィドルの違い」を読む』。
最終回の今日は、『「無教養?」編』と題してみました。

「ヴァイオリンは歌う、しかしフィドルは踊る」という文句がありますが、「酒とフィドラー」にも見られるように、フィドルはヴァイオリンに比べると「楽しいもの」、「愉快なもの」、「ダンスをしながら(または酒を飲みながら)弾くもの」といったイメージがつきまとうようです。

フィドルは何やら楽しげである、というこのイメージは、はたから見て、もしくはかしこまった雰囲気のクラシックヴァイオリンと比較して「楽しげだ」と見える、あくまで聴く者がそう感じる、ということなのかもしれません。
アイルランドのフィドル奏者たちは少なくとも、ニコニコ顔で「楽しげに弾こう!」ということは誰も目指していないですし、むしろアイルランドの音楽はかなり抑制のきいた曲調のものが多いようにさえ思います。

「ヴァイオリンとフィドルの違い」には、以下のような引用文が見えます。

・ ヴァイオリンの上手な人は正しい運指をマスターしている
・ フィドルが上手な人は無茶苦茶の運指で正しく弾ける

・ ヴァイオリニストは楽屋で今日弾く曲を練習している
・ フィドラーは楽屋でみんなと遊んでいる

・ ヴァイオリニストは車を道の真ん中で停める
・ フィドラーは他の車にぶつけてから停まる

・ ヴァイオリニストはヴァイオリンの他はよくわからない
・ フィドラーはフィドルのこともよくわからない


ヴァイオリニストが音楽にひたすら真面目に取り組む一方で、フィドラーは脳天気で無教養、といったところでしょうか。ステレオタイプ化もここまで来ると説得力に欠けはじめ、さすがにこれを鵜呑みにする人はいないはずです。

気になるのは、「フィドルが上手な人は無茶苦茶の運指で正しく弾ける」というもの。
「無茶苦茶な運指」というのがどんな運指なのか分かりませんが、私の知っている限り皆さん正しい運指で弾いています。アイルランド音楽の曲は、どれもヴァイオリンで言われるところの「第一ポジション」でほとんどまかなわれることは事実です。第二ポジションまで行かないと音が出せない曲もあることにはありますが、数は限られます。

また、アイルランド音楽のフィドルについて「適当にアドリブを弾く」、「フィドルは適当に弾いてもそれがかえって味になる」という解釈もあるようですが、「適当に弾く」という表現にやはり違和感を感じます。
楽譜に指示のない演奏を良しとする、多少のアドリブが存在する、ということが「適当に弾く」という表現にすり替えられているのでしょうか。

アイルランド音楽におけるフィドルについては、「無茶苦茶の運指で弾いて良い」とか「適当に弾いてもそれが味になる」といった教え方は、誰一人していないはずです。
これも、クラシックで訓練を積んだ側から見た先入観の一つなのかもしれません。

また、「アイルランドの伝統音楽」というと、「アイルランドのど田舎の農家のおじいさんがやっている音楽」という、これまた限定されたイメージ像を思い浮かべる方も、ひょっとするといらっしゃるかもしれません。
しかし、これもまた払拭されなくてはならないイメージで、今やアイルランド音楽はその人の職業や社会的地位を問わず、老若男女あらゆる人々に幅広く愛され、演奏されている音楽です。
教育の一環として取り入れている学校もあれば、大学教授、弁護士、医師、教師などの仕事に従事するアマチュアのエキスパートが、アイルランドには大勢います。

以上、「ヴァイオリンとフィドル」の引用文から見たアイルランド音楽のフィドルをテーマに記事を書いてみました。アイルランド音楽への誤解が解け、ありのままのアイルランドのミュージシャンたちとフィドル事情を、少しでもお伝えすることができれば幸いです。


望月えりか

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「ヴァイオリンとフィドルの違い」を読む 「楽器の価値」編

2013.10.08 18:44|フィドル
皆さんは「ヴァイオリンとフィドルの違い」とか「ヴァイオリニストとフィドラーの違い」というタイトルの引用文、またこれに類する文章を読んだことがありますか?
私は最近になって初めてこのようなものを読みました。ブラックバードミュージックの大さんが「えりかさん、こんなのがあるんですよ」と教えてくれていなかったら、ずっと気づかないままだったかもしれません。

ヴァイオリンとフィドルという、楽器自体はまったく同じものがなぜ音楽によって呼び方だけ変わるのか。
また、日本人にとってはフィドルよりもヴァイオリンの方になじみがある故に、これらの引用文は基本的には「フィドルとは何か」を説明しているようにも受け取れます。
いずれにせよ、一般の方々にとっては一見理解に苦しむこの疑問に、分かりやすく答えようという理由で生まれたものなのかな、と思います。

これらの引用は出どころが不明のようですが、いずれもジョーク調の切り口で書かれているのが特徴で、故に話題性があります。

「あくまでこうした傾向にある」と記されている一方で、「かなり的を得ている」「納得できる」といった解釈もあるようです。
完全ななジョークであれば笑い飛ばせるのですが、中にはあまりに極端で誤解を招きかねない例もあり、驚きました。
これがもとで、アイルランド音楽におけるフィドルという楽器が多少なりともイメージ化されているとすれば、アイルランドのフィドル奏者たちに対して、なんだか申し訳ない気がするほどです。

キャッチ―で面白いものは人の目にもとまりやすく、影響力も大きいです。しかしながら、こうしたものから固定観念やステレオタイプが生まれてしまうのも事実ではないでしょうか。
ステレオタイプという名の色眼鏡は、真実を曇りなき眼で見つめようとする際の大きな障害となります。

「たかがジョークなんだから・・」とは思いつつ、これを検証してみることでアイルランド音楽におけるフィドル事情が見えるのではないかな、と思いました。

「ヴァイオリンとフィドルの違い」は長い引用文なので、数回に区切って書いていきたいと思います。
初回の今日は、この中に見える「楽器の価値」に着眼します。

ヴァイオリニストは自分の演奏の不出来を楽器のせいにする
フィドラーは楽器のせいにできるほどいい楽器を持っていない


表板が光ってきれいなのがヴァイオリン
松脂の粉が山のようになっているのがフィドル

また、「フィドルにビールをこぼしても誰も泣くものはいない」というフィドルに関する格言(?)もあるようです。

つまり、「高価なヴァイオリンに対してフィドルは安物」、「フィドルは安物なので、扱い方もそれなり」ということのようです。

では、実際アイルランドのフィドル奏者たちはこの通りなのでしょうか。

昔のアイルランドのフィドル奏者たちは、現実的に高価で品質の良いフィドルを手にすることができないケースが多かったようです。そのため、アイルランド音楽の世界では伝説的なフィドル奏者でも「こんなにひどいフィドルを弾いていたの?!」とびっくりする場合があります。

かと言って、現代のアイルランドのフィドル奏者たちが自分の弾くフィドルにはまったく無頓着で、中国製の量産フィドルで大満足している、ということでは無論ありません。
それどころか、フルートやコンサーティーナなどほかの楽器と同様に皆さん「あれでもない、これでもない」と楽器には非常にシビアです。

しかしながら楽器の価格帯の話になると、ヴァイオリン奏者が楽器に対して何百万、時にはそれ以上の投資をするのに対し、アイルランドのフィドル奏者たちが数万円~数十万円の楽器を弾いている場合が多いのも事実です。もちろん、中にはクラシックヴァイオリニスト並みの投資をするフィドル奏者たちもいるはずですし、この点に関しては人それぞれではないでしょうか。

楽器の扱いについては、これにほぼ比例していると言っていいかもしれません。つまり、とても高価なヴァイオリンに比べると、ケアの度合いは確かに低いかもしれません。事実、アルランドのフィドル奏者の中には、それこそ松やにの粉で真っ白になったまま、埃っぽいままのフィドルを弾いている場合が多々ありますし、時にはそうした表面上の問題だけでなく、楽器自体に支障があるのに弾き続けているようなこともまれにあるようです。
しかしこれにも個人差があって、特にパフォーマンスをするようなレベルのフィドル奏者たちはほぼ間違いなく、丁寧に楽器の掃除や行き届いたメンテナンスをしているはずです。

ゴールウェイのフィドル奏者の友人がいます。アルバムも出しているし、海外にツアーに行ったりもするような腕の持ち主ですが、この人のフィドル自体は「そんなに安物でいいの?」と余計な心配をしてしまうほどの質のフィドルです。
本人もそれは百も承知なのですが、「私はこのフィドルに愛着があるし、サウンドも愛している」と言います。

これこそが、アイルランド音楽における楽器、殊更フィドルに関しての基本中の基本のように思います。
つまり

「自分が好きな楽器であること」

例えそれが中国製の安物でも、自分がいいと思えばそれで良いのです。

アイルランドのフィドル奏者、マーティン・ヘイズがアメリカで本物のストラディヴァリを試し弾きする機会があったそうですが、「好きになれなかった」という話も聞いたことがあります。
このように、逆にどんなに高価な楽器であっても、自分が気に入らなければ何の価値もありません。
これは、クラシックの世界でも、またどんな音楽の世界でも当然のことではないでしょうか。

その楽器にどれほどの価値があろうとも、フィドル奏者にとって楽器は宝です。例えそれが悪質なフィドルだったとしても、ビールをこぼされて嘆かないフィドル奏者はいないのではないかと思います。


望月えりか

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ヴァイオリンからフィドルへ

2012.11.17 00:13|フィドル
アイルランドの音楽で使用される楽器の一つにフィドルがあります。

「フィドル Fiddle」とはヴァイオリンと同じ楽器なのですが、アメリカのオールドタイムやカントリーミュージック、アイルランド音楽をはじめとするヨーロッパの民族音楽のようなジャンルにおいては、この楽器の呼称が「フィドル」となります。

フィドル

逆に言えば、クラシック音楽で使われる際には「ヴァイオリン」と呼ばれる、ということなのかもしれません。

アイルランド音楽において楽器のセットアップや好まれる音色そのものが、クラシックヴァイオリンとは異なる場合もありますが、基本的には全く同じ楽器なのです。

ではアイルランド音楽におけるフィドルとクラシック音楽におけるヴァイオリンの違いは、一体何でしょうか。

これは、とにかくその奏法にあると思います。

そもそもアイルランド音楽とクラシック音楽は異なる音楽なので、テンポのとり方やリズムの刻み方などが全く違います。これは楽譜におこされたアイルランドの曲を見てもなかなか分かりませんが、音楽を聴いてみるとその違いは顕著です。

これをフィドルという楽器でやろうとすると、弓をどう使うかが大きなポイントになるような気がします。

かと言ってこの弓使いにはルールがあるわけではなく、皆それぞれ好きなように動かしています。
例えばフィドル奏者が3人一緒に弾いていたら、弓の向かう方向が3人いつでもきれいに揃っていることはまずないと言っていいでしょう。
弓の上から下まで使う人がいれば、弓の先端に近い部分でしか弾かないフィドル奏者もいます。弓に思い切り圧力をかけてボリュームを出す人もいれば、羽のように軽くなぞるように弓を動かす人もいます。更には、同じ曲の同じ箇所でもその時その時で弓の動かし方が違ってきます。
このように皆それぞれ表現方法が異なりますが、自分のスタイルで演奏することが基本です。
それがフィドルの本質でもあり、アイルランド音楽の本質でもあるように思います。

アイルランドではフィドルの構え方にもこれといった決まりがありません。自分の持ちやすい形で構えればいいという、カジュアルなスタイルです。中にはきわめて個性的なフィドルの持ち方をする人もいます。

Pジョー構え方
[あご当てはついていても全く使用せず、フィドルを顔の脇に立てるように構えていたPジョー・ヘイズ]


ブリーダ構え方
[ブリーダ・ケヴィルのフィドルの構え方はかなり個性的]


ここアイルランドで親しくしている、ある友人がいます。彼女も小さい頃からクラシックヴァイオリンをやっていて、大人になってからアイルランド音楽に出会い、「フィドルを弾いてみたい」と思ったのだそうです。

彼女のように、日本をはじめ多くの国でクラシックヴァイオリンからアイリッシュフィドルへ転向する人々が数多くいます。
異なる音楽ではあれど楽器は同じなので、敷居が低いように感じるかもしれません。とりわけ、アイルランド音楽は曲の数こそ膨大ですが、一曲一曲はきわめてシンプルで、技術的にも問題なさそうです。

楽譜さえあれば、次から次へと難なくアイルランドの曲を弾くことができます。

しかし、先述の友人にとっては、クラシックヴァイオリンを弾いていたことが逆に大きなハードルになったと言います。
どうしてもクラシックの癖が抜けない。
楽器の構え方、指使い、弓の使い方、奏でる音色。どれをとっても体にしみついた訓練の結果はそう簡単に拭い落とせないものだそうで、どんなにフィドルらしく弾こうとしても周りからは「クラシックの音が聞こえる」と言われてしまう。

アイルランド音楽に多用される装飾音(オーナメンテーション)を使いこなせるようになっても、音色は相変わらずヴァイオリンのまま。
どうしたら、自分の楽器がヴァイオリンからフィドルになってくれるのか。何年もかけて、相当の努力をしたようです。

こうした傾向を目の当たりにするフィドル奏者の中には、「クラシックで訓練を受けていない方がフィドルの上達が早い」と踏む人もいるようです。

全く異なる音楽に挑戦するわけですから、楽器が同じでもそこからの応用はきかないということなのかもしれません。
むしろフィドルというまったく新しい楽器を、時間をかけて一から学ぶという姿勢が大事なのかなと思います。


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