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ブラックバードミュージック

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ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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ウィーリー・クランシーサマースクールのセッションシーン

2014.07.16 00:25|アイルランド音楽現地情報
今年のウィーリー・クランシーサマースクール(Willie Clancy Summer School 略してWCSSと記されることもある)は、先週末に無事幕を閉じました。

私の暮らすフィークルはクレア東部なので、西クレアにあるミルタウンはエニスの反対側、車では45分ほどかかります。ミルタウン訪問はいずれも日帰りでしたが、午後の穏やかでフレンドリーな雰囲気の中、音楽を楽しむことができました。

WCSS期間中には、ミルタウンマルベイとその周辺地域にあるパブで日夜セッションが行われます。
ミルタウンのメインストリートを歩いているだけで、あちらからもこちらからもライブの音楽が聞こえてきます。雨に見舞われることの多いWCSSですが、私たちが訪れた週の前半は天気にも恵まれ、ストリートで小銭をもらう子どもたちのミュージシャンや外国人の姿も多く見かけました。

ほかの音楽フェスティバルにおけるパブセッションは、たいていの場合フェスティバルの一環として行われており、フェスティバルの実行委員会やパブの店主によって、ホストを務めるミュージシャンたちがあらかじめ決まっています。それに対し、WCSSの期間にあるパブセッションは、すべてが自然発生的に行われるのが大きな特徴です。
誰一人として雇われている音楽家はおらず、自らの楽しみのために集まってくるのです。

ミルタウンセッション (2)
いい音楽を聴きたければこのパブへ。パブのサインはリンチ(Lynch)だが、人々の間ではフリールズ(Friels)の名で知られる

このようなミルタウンでのパブセッションを見ていると、いくつかのことに気づきます。
例えば、数あるパブの中にも「いい音楽をやっているパブ」というものがあるようです。それらのパブは、サマースクールという非日常的なイベント以外の時でもレギュラーのセッションが行われているパブであったり、オーナーが音楽好きであったり、はたまたミュージシャンたちにとって音響のいいパブであったりします。
また、ミュージシャンたちにとってもそれぞれお気に入りのパブがあり、「○○バーに行くと、あの人が演奏している」といった傾向もあるようです。

終盤にさしかかるとミルタウンに赴く人々の数とお酒の量が急増し、パブでのトラブルも増えてきます。セッションはミュージシャンの数が増え過ぎてまとまりがなくなることも多く、ミルタウンの町中でいい音楽を聴ける確率は週末に近づくにつれて減少する、と考える人も多いようです。

「町が音楽だらけになるのはいいけどね、本当にいいセッションに出合う前に10個ぐらい悪いセッションも聞かなきゃいけないから!」などと大げさに話す人もいましたが、それだけ混沌とした側面があるのかもしれません。

音楽を楽しみたい音楽家たちは、セッションを破壊する見知らぬミュージシャンや酔っ払いに邪魔されることのない、ミルタウン近辺の町や村のパブに移動してセッションをしていたりします。

ミルタウンセッション (3)
通りで即興的に始まったセットダンス。踊るのはクレアに住む名ダンサーたち。

彼らが実際にパブでセッションを始めるのは、どのようなタイミングなのでしょう。
たいていの場合、ミュージシャンたちは普段からの音楽仲間や友人らと連絡を取り合ってパブで落ち合う、または通りで偶然合流して一緒にパブへ向かう、といった方法でセッションを始めるケースが多いようです。
また、入ったパブで知り合いや仲間が演奏していて、「楽器持ってるなら入ってよ!」、「よし、じゃあ車から取ってくる」というようなこともあります。

ミルタウンセッション
ミュージシャンたちのお気に入りのパブの一つ、クリアリーズ(Clearys)。ブロンズ(Blondes)の愛称で親しまれる

彼らはセッションに参加したいがためにミルタウンに来ているのではなく、この小さなアイルランド音楽のシーンにいる懐かしい友人や知人に会いに、またその祭りの雰囲気を楽しむために足を運んでいるように見えます。それは、さながら同窓会のような雰囲気です。

若者や子ども、訪問客をのぞいたあるレベルの音楽家たちが、入れるセッションを求めて楽器を片手に歩き回っていることはほとんどないようです。全く面識のないメンバーのセッションに入るなど、まず考えられないというのが彼らの日頃からのスタンスではないでしょうか。こうしたところは、いかにもアイルランド人らしい行為のように思えます。

また、セッションには加わらずひたすら音楽に耳を傾けるミュージシャンたちの姿を多く見かけるのも、ミルタウンです。
独特の緊張感があると同時に、こうした光景がこの音楽のクオリティーを支えているようにも見えます。


望月えりか

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ジャンル:音楽

アイルランドのセットダンスとパーキンソン病

2013.09.13 02:17|アイルランド音楽現地情報
アイルランドに住んでいると、私と同じようにアイルランド音楽に魅せられた海外からの訪問客に出会う機会がよくあります。その一人に、イタリア人のダニエレというギター奏者がいます。

パットはエニスのカスティーズで働いていますが、お店のよき同僚パウロは北イタリアの出身。
彼もまた、アイルランド音楽に魅せられてイタリアからクレアに移り住んでしまった人の一人です。

ヴェネツィア出身のダニエレとは、パウロの紹介で知り合いました。
今ではすっかり意気投合し、アイルランドに来るたびに我が家に遊びに来てくれるダニエレとは、いつも食事とお酒と音楽を楽しむ仲です。

「職業は医者らしい」ということは知っていたものの、去年ダブリンで開かれた医療学会にダニエレが出席し、そこである研究結果を発表するまでは、彼の医者としての素性を全く知らずにいました。

彼は神経学が専門の医者で、パーキンソン病の研究をしています。
パーキンソン病は不治の病で、進行を遅らせる治療法もまだ確立されていません。アフリカ系、アジア系に比べると、ヨーロッパ系の人々に多い病気とされています。
手足の曲げ伸ばしに支障が出たり、手足のふるえなどが主な症状です。俳優のマイケル・J・フォックスや元ボクサーのモハメド・アリなどが発症したことは、よく知られているのではないでしょうか。

ダブリンの学会でダニエレが発表したのは、「アイルランドのセットダンスがパーキンソン病患者のリハビリ治療に効果的である」というものでした。

アイルランドの人々にとっては、自分たちの文化であるセットダンスがこの病の治療に有益である、という事実はことにセンセーショナルでした。学会の直後は大手の各新聞社、テレビ局などが大きく報道し、アイルランド全国でこのニュースに注目が集まりました。

ダニエレは、今から3年ほど前にフィークルのパブ、ペパーズでギターを片手にセッションを楽しんでいる際、ある男性の姿を目にしたと言います。「足取りが不安定で歩くのもおぼつかず、パーキンソン病患者であることがすぐさま察せられた。しかしこの男性がセットダンスを踊り始めた途端、しっかりとステップを踏んでいる。そんなことがあり得るのかと思った」

アイルランド音楽への個人的な愛情も手伝って、ダニエレはヴェネツィアに戻るとさっそく研究に着手、自らのパーキンソン病患者たちのためにセットダンスグループを立ち上げます。

その結果、「アイルランドのセットダンスを踊ることで、患者たちの体の動きとバランスに向上が見られ、患者が転倒する確率が減少した」と言います。
また内向的になりがちなパーキンソン病患者たちに社交の場を与える、という特典もあるということです。

そんなダニエレとフィークルとの音楽的な縁が結ばれた結果、今年のフィークルフェスティバルのオープニングセレモニーでは、ダニエレがフェスティバルの開会を宣言しました。
また、ヴェネツィアよりダニエレが引率したパーキンソン病患者たちが、現地のミュージシャンたちによる音楽に合わせて、素晴らしいセットダンスを披露、会場に集まった地元の人々や関係者たちから大喝采が起きました。

セットダンスとパーキンソン
[クレアに住むイタリア人とアイルランド人のミュージシャンたちによる演奏で踊る、イタリアのパーキンソン患者たち。パットも演奏しています]

オープニングセレモニーの前日には、ダニエレをはじめダブリンやリムリックの神経内科の医師らによるパーキンソン病の研究成果の発表とセットダンスのイベントも開催され、静かだった村は専門家や報道関係者たちの車で埋まりました。

セットダンスとパーキンソン
[企画の指揮を執った元クレア州知事のパット・ヘイズとダニエレ。パットの父、P・ジョー・ヘイズも晩年はパーキンソン病を患っていた]

現在、アイルランドには約9,000人のパーキンソン病患者がいるとされています。
今月からは、ダニエレの医療チームとリムリック大学が共同で研究をスタートさせるそうです。
また、オーストラリアやカナダなどの国々でも研究チームが発足し、アイリッシュセットダンスとパーキンソン病とのより詳細な因果関係を探っていくということです。

今後の進展が注目されます。


望月えりか

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フィークルフェスティバル2013 ワークショップ編

2013.08.20 21:13|アイルランド音楽現地情報
前回の記事で今年のフィークルフェスティバルにおけるパブセッションの様子をご紹介しました。
今回はフィークルフェスティバルのもう一つの魅力であるワークショップ編です。

フィークルのフェスティバルは水曜日の夜に正式に開会し、ワークショップは翌日の木曜日の朝から3日間にわたり開催されます。
ワークショップとは楽器別に行われるグループレッスンのことです。フィークルでは、フィドル、コンサーティーナ、フルート、ホイッスル、アコーディオン、バンジョー、ギター、歌、そしてダンスのワークショップが行われています。

今年は縁あって、日本からいらしたお客さまのアシスタントをするために、フィドルのワークショップを3日間受講させていただきました。
ワークショップにはほかの受講者もいることから、講師の話をその場で通訳していくことはできません。その代わり、講師のレクチャーを中心にワークショップの内容をつぶさに書き留め、フェスティバル終了後にワークショップレポートを作成、これをお渡しするというサービスの形をとらせていただきました。

お客さまにも大変喜んでいただき、また私にとっても勉強になる充実した作業でした。

フィドルのワークショップはフィークルの小学校が会場です。ここで受付を済ませてから教室に入ります。
私たちのクラスには、およそ20人の受講者がいました。9歳ぐらいの子どもから大人まで、国籍もさまざまです。

フィークルフェスティバル2013 2日目 (4)

ワークショップ1日目の講師はマーティン・ヘイズ(Martin Hayes)。
ここフィークルから数マイル離れたMagheraという場所の出身で、今や世界中にファンを持つアイルランド音楽界のスター的存在です。

フィークルフェスティバル2013 1日目 (2)

マーティンのワークショップはレクチャー、つまり話の多いことで有名です。
そのため、小さな子どもや10代の若者たちにとっては、やや厳しいように感じました。フィドルを弾くよりも楽器を膝の上に置きっぱなしの時間が圧倒的に多く、ひたすら講師の話を聞くスタイルです。

また、特に言葉の不自由な外国人にとっては、話の内容についていけずに収穫の少ない残念な結果となってしまいます。

しかしマーティンの話はとても興味深く、実践では理解しにくい音楽への姿勢や演奏をする上で彼が大切にしていること、具体的な練習法などを知ることができました。

2日目の講師はアイリーン・オブライエン(Eileen O'Brien)。
ティペラリー州Newtown出身の素晴らしいフィドル奏者です。

フィークルフェスティバル2013 2日目 (2)

アイリーンのフィドル演奏にはマーティンと同様にクラシックの影響が伺えます。彼女は子どもの頃からクラシックヴァイオリンの訓練も受けていたのです。
普通はクラシックヴァイオリンで訓練を長年受けていた人がアイリッシュフィドルへ移行することは、クラシックの癖を捨てることが難しく、容易でないと言われます。しかしアイリーンの場合は幼少のころから同時進行でフィドルを弾いていたせいか、邪魔をすることなく共存しているように感じました。

3日目の講師はイヴォーン・ケーン(Yvonne Kane)。
ゴールウェイ州レターフラッグ近郊の出身です。
姉のリズと共にケーンシスターズ(Kane Sisters)として音楽活動をしていることで知られています。

フィークルフェスティバル2013 3日目 (2)

今回最も実践の多かったイヴォーンのワークショップでは、シングルリールを2曲続けて習いました。
曲はもちろん耳で覚えるスタイルです。楽譜から曲を覚えている方は最初驚くかもしれませんが、耳から曲を覚えることはアイルランド音楽の基本です。
楽譜は一切使わずに、小節ごとに区切ってイヴォーンがゆっくり弾き、生徒たちがあとに続いて繰り返しながら一つの曲をマスターしていく、一般的なスタイルで進行しました。

3日間のワークショップで、個人的に最も楽しめたのがアイリーン・オブライエンのソロ演奏でした。

フィークルフェスティバル2013 2日目 (1)

彼女のフィドルは音色がとにかく美しく、心に深く響きました。
アイリーンの亡き父、パディー・オブライエン(Paddy O'Brien)は、アイルランドを代表するアコーディオン奏者ですが、100曲以上の曲を書き残した作曲家として有名です。この日の課題曲もオブライエンのジグでしたが、大変美しい曲でした。
アイリーンによるパディー・オブライエンの曲集も出版されています。私も1冊ほしくなってしまいました。
The Definitive Collection of the Music of Paddy O'Brien 1922-1991

3日間のワークショップで3人のフィドル講師のワークショップを受けました。おかげで講師それぞれの個性と演奏スタイル、そして音楽に対する姿勢や練習法などを学ぶことができ、大変充実したワークショップでした。

ワークショップの内容の多くには、アイルランド音楽の基本的なとらえ方や輪郭を知るヒントが数多く含まれていました。一つ一つのトピックが非常に興味深いものですので、このブログでも今後ていねいに触れていきたいと思っています。


望月えりか

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フィークルフェスティバル2013 セッション編

2013.08.16 02:33|アイルランド音楽現地情報
先週の水曜日から6日間にわたって開かれていたフィークルフェスティバル。26周年を迎えた今年のフェスティバルも、世界中からやってきた多くのアイルランド音楽ファンで賑わいました。

フィークルフェスティバル2013プログラム
フィークルフェスティバル公式サイト

アイルランドをはじめ、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアといった国々から人々が訪れますが、今年は日本からも多くの方々がいらっしゃいました。

フィークルフェスティバルには、コンサートや楽器別のワークショップ(グループレッスン)のほか、ウォーキングや子ども向けのアトラクションなども盛り込まれ、内容は実に多彩です。
しかし、公式のプログラムには載っていないパブでのセッションも、フィークルフェスティバルが長年にわたって絶大な人気を誇っている理由の一つです。
フィークルのパブセッションは、このフェスティバルの顔といっても過言ではありません。

今回は、ブラックバードミュージックでもおなじみのフィドル奏者、パット・オコナー(Pat O'Connor)のセッションを中心に、セッションの様子を写真を交えてご紹介していきます。
アイルランドのパブでのセッションが一体どのように行われているのか、そんなことも踏まえながらお伝えできればと思います。

フィークルフェスティバル2013 (36)

村のはずれにあるペパーズ(Pepper's)は、あのタラケーリーバンドのメンバーがレギュラーで演奏をしていたことで有名になったパブです。

これはペパーズにあるパーラーと呼ばれる小部屋で、パットと彼の親しい友人であり良き音楽仲間であるジョン・カニー(John Canny)が自発的にはじめたセッション。つまり、パブから雇用されて行われるセッションではなく、ミュージシャンたちが演奏をしたいがために自らスタートさせたセッションです。

このセッションでは、フィドルの調弦を一つ落としたCのキーで弾いていました。通常より若干低いこのキーが独特の深みを与えて、何とも味のある音楽を作り出していました。

バーの騒音から見事に遮断された空間で、余計な贅肉の全くない研ぎ澄まされた演奏を聴くことができ、思わぬ収穫となりました。

フィークルフェスティバル2013縮小

かわってこちらは村の中心にあるボーハンズ(Bohan's)。フェスティバルの初日の夜に行われた、パット・オコナーとオーイン・オサリヴァンのセッションです。
今年ワークショップの講師を務めたコンサーティーナ奏者のコーマック・ベグリー(Cormac Begley)とフルート奏者のタラ・ダイアモンド(Tara Diamond)が飛び入り参加していました。
セッションをリードするパットとオーインが中心になって曲のセットを次々に決めていきますが、タラとコーマックに対するリスペクトを忘れず、彼らにもセットをはじめてもらいながら上手くセッションのバランスを取っていきます。パットとオーインの持ち味であるリズムが特徴的な、心楽しいセッションでした。

フィークルフェスティバル2013 (35)

フィークルフェスティバルでは、パブセッションが行われるのは夜だけではありません。
こちらは同じくボーハンズで日曜日の午後にあったセッションの様子。アフタヌーンセッションはお酒も控えめになるのと、子連れの家族の姿も多くのんびりとした雰囲気があります。
ここには写っていませんがコンサーティーナ奏者のメアリー・マクナマラ(Mary MacNamara)、パット・オコナー、そしてバンジョー奏者のポーリック・マクドナハ(Paraic MacDonnchadha)という3人によるセッションでした。

フィークルフェスティバル2013-1

同じく午後の時間帯にあったショーツ(Shortt's)でのセッション。
このパブのラウンジと呼ばれる部屋は大部屋で、そのためかセッションも大規模なものとなりました。
セッションをリードするのはパットとフィドル/ギター奏者のマーク・グレゴリー(Mark Gregory)。
マークのフィドル奏法はオリジナリティーにあふれています。フィドルの巨匠パディー・カニー(Paddy Canny)の音色が聴こえてくるようなマークの演奏スタイルは、パットのそれとは大違い。なのに2本のフィドルが一度になると、ぴったりと合ってしまうのですから不思議です。しかしそれもそのはず、この二人のつきあいは実は20年以上で、長年音楽を共有してきた結果の賜物なのです。

フィークルフェスティバル2013 (16)

夕方の5時からペパーズで始まった、今年のワークショップの講師陣によるセッション。
コーマック・ベグリー(コンサーティーナ)、タラ・ダイアモンド(フルート)、ポーリック・マクドナハ(バンジョー)、そしてフィドル奏者のイヴォーン・ケーン(Yvonne Kane)の4人です。
セッションをリードするミュージシャンが4人というのはまれな数字です。通常は2人、時に3人でセッションは進行されます。選曲や曲のセットといった取り決めをするのに、ミュージシャン同士がコミュニケーションを取りやすいからです。

また、このセッションはE♭のキーに上げて行われていました。最初にご紹介したCにチューニングを下げたセッションやE♭のように、通常のチューニングとは違うキーでのセッションというのは、アイルランドではときどき見かける光景です。
たいていの場合、このようなチューニングのフルートやコンサーティーナが入っているためというのが理由ですが、チューニングを変えてしまうことでセッションに次から次へと入ってくる他のミュージシャンをけん制するという、ちょっと意地悪とも言えるような効果も実はあるのです。

ここでご紹介したセッションのほかにも、目の覚めるような素晴らしいセッションが数多くあった今年のフィークルフェスティバル。まさにセッションに明け暮れた6日間でした。

パブセッションは、アイルランド音楽ファンにとっては興味深いトピックです。今回はフィークルフェスティバルで見聞きしたセッションの様子をお伝えするだけにとどまりましたが、今後このブログでたびたび取り上げていきたいと思います。どうぞお楽しみに。


望月えりか

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ウィーリー・クランシーサマースクール

2013.07.13 06:45|アイルランド音楽現地情報
先月の記事でご紹介したパイパーのウィーリー・クランシー

この偉大なるパイパーの名のもとに行われるイベント、ウィーリー・クランシーサマースクール(Willie Clancy Summer School)が、西クレアのミルタウンマルベイ(Miltown Malbay)で現在開催中です。

私たちも、おとといの午後に遊びに行ってきました。

ウィーリークランシ―2013 (2)

このサマースクールは、アイルランド音楽のイベントでは最大のものと言われています。
ミルタウンは(英語でもこのようにマルベイを省略して呼ばれることがしばしばです)決して大きくない町ですが、サマースクールの時期になると通りは車でびっしりと埋まります。
そして、町はどこも人、人、人。特に楽器を持った人々の姿が目立ちます。

ウィーリークランシ―2013 (6)

サマースクールという名の通り、このイベントは楽器別のクラスが1週間にわたって行われます。フィドル、フルート、コンサーティーナ、アコーディオン、ホイッスル、パイプス、バンジョー、ハープ、ハーモニカといった楽器のクラスのほか、歌とダンスのクラスも豊富で人気があります。
教鞭をふるう講師の数はなんと150人ほど。
イベントにあやかったリサイタルやケーリー、展示会などもあり、まさに盛りだくさんの内容です。

クラスを受けにやってくる人々の数は数百人、イベントを楽しむためにやってくる人々は合わせて数千人にものぼると言われています。ここ数年の不況で伸び悩んでいた参加者の数も、今年はやや上向いたようです。

ウィーリー・クランシーサマースクールは、今やアイルランド全国のミュージシャン、ダンサー、歌い手たちが一堂に会する1週間です。
私はクレアに住んでいるので尚更かもしれませんが、毎年この時期になると「ウィーリー・クランシーにはいつ行く?」という会話が人々の間で飛び交います。それほどこのイベントのためにミルタウンに足を運ぶことは、ミュージシャンたちにとっては当たり前の行為なのです。

このサマースクールのもう一つの魅力といえば、なんといってもパブでのセッションです。

ウィーリークランシ―2013 (11)
<写真提供:しおみずさん>

これだけ多くのミュージシャンたちが集うので、セッションのレベルも非常に高くエネルギッシュです。
普段は聴けないような素晴らしいミュージシャンたちの演奏を、飲み物片手にパブで楽しめる贅沢とその興奮といったら、まるで夢の中にいるようです。

サマースクールの期間中にパブで行われるセッションは、どれも自然発生的に行われています。つまり、どこのパブも特定のミュージシャンを雇っているわけではなく、ミュージシャンたちが自ら楽しむために集まって始まるのです。

そのため、どこで誰がセッションをしているかということはプログラムには載っていません。自分の足でパブを回り、自分の耳で確かめるしかありません。
セッションはたいていクラスの終わる午後から夜まで連日続きます。

サマースクールの時期は、毎年なぜかお天気に恵まれないことが多いのですが、今年は違いました。こんなに暑くなったのは1995年以来では、とアイルランド人たちが回想するほどの快挙で、毎日晴天、そして30度近くになる暑さが続いています。

ウィーリークランシ―2013 (10)
<写真提供:しおみずさん>

お天気がいいと、外にまでミュージシャンたちがあふれます。通りでこんな風に音楽を楽しむ姿も、絵になるひとコマです。

また、アイルランド音楽に携わる者なら、この時期ミルタウンで知り合いに会わないことはまずありません。
親しい友人だけでなく、毎年ここで必ず会う懐かしい顔ぶれも多いのです。
私たちもおとといのミルタウンでは、通りで、そしてパブで、嬉しい再会がたくさんありました。
音楽を通して知り合った、懐かしい友との再会。これもこのサマースクールの醍醐味の一つではないでしょうか。

このサマースクールの存在はあまりに大きく、もはや世界中のアイルランド音楽ファンの間で語り継がれています。日本からも毎年何十人もの人々が、ミルタウンを目指してアイルランドへ旅立ちます。

ウィーリー・クランシーサマースクールは、クレアがアイルランド音楽のメッカといわれるゆえんの一つと言えます。
明日の夜、またフィークルから車を飛ばして遊びに行く予定です。

ウィーリー・クランシーサマースクールの公式ウェブサイトはこちら→Willie Clancy Summer School


望月えりか

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