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ブラックバードミュージック

Author:ブラックバードミュージック
ブラックバードミュージックは、等身大のアイルランド音楽の魅力を本国直送で日本へ紹介することを目的としたプロジェクトです。
名古屋のフィドル奏者小松 大と、在アイルランドの望月えりかが共同で運営しています。

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セッションに伴奏者は2人も要らない?

2018.09.14 14:10|伴奏楽器
ブラックバードミュージックのブログ読者の皆さん、こんにちは。
大変長らくアイルランド音楽の記事を書けずにおりましたが、身辺がだいぶ落ち着いてまいりましたので下書きにずっと入ったままでいた記事を再編集しまして久々の更新とさせていただきます!楽しんで読んでいただけましたら幸いです。

さて、これは音楽仲間とのとある会話です。

「今夜のセッション、マーティンも来るかな」
「うーん、どうだろう。今夜のホストの一人はギターのショーンだから、マーティンは来ないか、もしくは来てもブズーキは弾かないと思うよ」
「?」
「だってほら、二人とも伴奏者だから。一つのセッションに二人要らないでしょう」

ブズーキ奏者のマーティンは、セッションをホストできるぐらいの腕の持ち主です。しかし、彼は今夜のセッションのホストミュージシャンではありません。ホストミュージシャンの一人はギター奏者であるショーンとアコーディオンのコナー、そしてフルートのデニス。
マーティンは彼らとも親しく付き合う仲間ですが、今夜はギターのショーンに配慮してセッションには参加しないということのようです。

フィドルやフルート、コンサーティーナなどメロディー楽器を弾く人にとって、そのセッションに同じ楽器の人がいるかいないか、何人ぐらいいるか、などということは事前に考える必要がないかもしれません。しかしながら、伴奏楽器の彼らにとってはこれがしばしばデリケートな問題であり、思慮のある判断が求められたりします。

確かに2人、3人のギターやブズーキといった伴奏者が同じセッションでそれぞれ思い思いに伴奏をしたら、いい音楽になるはずがありません。

でも、この前ちらっと見たエニスのとあるセッションでは、ホストミュージシャンの一人がギター奏者、でも同じくギターのミックさんもセッションに参加していたような・・・。

「ああ、ミックは別にそれでいいんじゃないの?セッションの伴奏というよりは誰も聞こえないぐらい静かに片隅で弾いていただけだし、結果的にホストのギター奏者の邪魔もしてなかったし」

そういうものなんですね。

また、ミュージシャンが20人、30人となるような大所帯のセッションが音楽フェスティバルなどにおいてときどき見られますが、こんな時も複数の伴奏者がいるということはさして問題にならないようです。
「だってそれだけ大人数になっっちゃったら音楽のクオリティーも何もないから、ミュージシャンたちも自然とどうでもよくなる(笑)」

ほかにも異なるケースによってこの辺りの考え方、受け止め方は変わってくるようですが、それにしても伴奏者の皆さんは大変そうです。
メロディー楽器と伴奏楽器。
アイルランド音楽における存在のあり方や位置づけはだいぶ違うようです。

望月えりか Erika Moc O'C@Twitter
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テーマ:アイルランド音楽
ジャンル:音楽

受け継がれるジャーマンコンサーティーナ

2015.11.19 20:36|コンサーティーナ
エニスにあるミュージックショップ「カスティーズ」には、実に多くの人々が訪れます。地元の人々はもちろんのこと、観光客やディーラー、ミュージシャンや歌い手たちが自らのCDを持参したり、店のスタッフとおしゃべりをするのに立ち寄ることも多いのです。

先日、とある地元の人らしき女性が大きなショッピングバッグに何やら入れて店にやって来ました。

「これ、この前電話で話した例の楽器なんだけど」

ということで、出てきたのがこちら。

ジャーマンコンサーティーナ

コンサーティーナです。
が、通常のものとは少し違う、ドイツ式のコンサーティーナ(ジャーマンコンサーティーナ)です。

アイルランド音楽におけるコンサーティーナの歴史を語りはじめると長くなるので今回は割愛しますが、大ざっぱにお話しますとこのジャーマンコンサーティーナは左右それぞれ10個のボタンしかない、つまり20キーのタイプの楽器です。

19世紀中頃から生産が盛んになり、アイルランドでも1970~80年代まで使われていました。
安上がりで入手しやすかったこともあり、コンサーティーナ奏者の古い白黒写真などを見ているとよく登場します。
30キー、またはそれ以上ある今日のアイルランド音楽シーンで一般的なコンサーティーナに比べ、一回りも二回りも大きなサイズのものが多かったようです。

アングロジャーマンコンサーティーナ2
[ジャーマンコンサーティーナを演奏するラウス州出身のメアリー・アン・キャロラン 1977年]

カスティーズに楽器を持ち込んだ女性は音楽のことには疎いようで「修理に出した方がいいのか、そもそもどれくらいの価値がある楽器なのかしら」とのこと。

「今は2列式でなく3列式が普通で、このスタイルのコンサーティーナはほとんど使われてないんですよ」とのパットの説明に納得した女性、「そうなのね、でもいろいろ教えてもらえてよかったわ。もう家族の中で弾く人はいないけど、私の祖母の世代からずっと家にある楽器だから、母も気になっててね。そういうことなら家で大事に保管しようと思う」とのことでした。

「そうですね、例え楽器としては使えなくても家族にとって歴史のあるものだから、捨てたりはしないで」

今回はコンサーティーナでしたが、アイルランドに暮らしているとその家に代々受け継がれている楽器を目にする機会があります。
特別な家柄でなくとも、ごく普通の一般家庭に眠っているフィドルやコンサーティーナ。中には一向に日の目を見ない楽器も多いことでしょう。
特に時代遅れとなりつつあるこのジャーマンコンサーティーナは、現役として使われなくなってから久しく、もともと高価なものでもないために修理費だけがかさみます。その結果、いつの間にか忘れられ、朽ち果ててしまうケースが多いようです。

例え価値のない楽器だとしても、ここに暮らす人々の家に昔からある楽器の存在は、アイルランド音楽と人々との深い歴史とつながりを感じさせてくれます。


望月えりか

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テーマ:アイルランド音楽
ジャンル:音楽

ティンホイッスルは楽器じゃない?

2015.07.12 07:51|ティンホイッスル
クレア州の州都、エニス(Ennis)にあるカスティーズミュージックショップ(Custy's Music Shop)には、実にさまざまな人々がやってきます。
ある日、店にやって来た女性が「楽器を見せてもらってもいいかしら?」と言うので、店内にあるフィドルやフルート、コンサーティーナ、バンジョー、アコーディオンなどのもろもろを簡単に説明してまわったのだそうです。

するとこの女性、「私ね、1年ほど前からティンホイッスルを吹いてるんだけど、そろそろ”楽器”をはじめようと思って。何がいいかしらねえ」との発言。

アイルランドに暮らしていると、よくこのようなアイルランド人に遭遇します。
彼らにとってティンホイッスルは「ちゃんとした楽器」ではないのです。

ティンホイッスル(Tin Whistle)は、多くのアイルランド人が一番最初に手にする楽器です。
まずはティンホイッスルからスタートし、やがて曲のレパートリーができていき、音楽の構成も理解できるようになると、フルートやフィドルといった楽器に移行していくのが一般的です。
そういう意味では、前述の女性はこの王道を行っていると言えます。

また、子どもの頃に音楽をはじめる場合が多いので、「ティンホイッスルは子どもが吹くもの」というイメージもあります。

ティンホイッスルは楽器じゃない?
[必須科目ではありませんが、アイルランドではティンホイッスルを使った伝統音楽のクラスがある小学校もあります]

ティンホイッスルは、ほかの楽器に比べ桁違いに安価であることも、この楽器の評価を低くしているようです。

初心者が手にする楽器。
子どもが吹いている楽器。
安い楽器。

このような理由から、無意識のうちにティンホイッスルをまっとうな楽器として認識していないアイルランド人が多いように思います。

一方では、アイルランド音楽の世界にはホイッスルの名人がたくさんいます。
この世界に住む者ならば、ティンホイッスルがこの上なく美しい音色を奏でることのできる立派な楽器であり、それは説明をするまでもなく誰もが知るところです。
しかし、伝統音楽に詳しくないごく一般的なアイルランド人たちにとっては、残念ながらこのイメージがいつまでもつきまといます。

ホイッスルケース (12)
[カスティーズの店内でも販売中の毛糸でできたホイッスルケース

そんな、ちょっとかわいそうな楽器ティンホイッスル。このイメージを払拭できる日はやって来るのでしょうか。


望月えりか

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テーマ:アイルランド音楽
ジャンル:音楽

ギター奏者は歌うもの?

2015.02.12 22:18|伴奏楽器
数週間前に、二人のお客さんがフィークルにいらっしゃいました。
フルートとギターでアイルランド音楽を演奏されるお二人と、一緒に地元のパブのセッションに行ってきました。

ギターを弾く彼は初めてのアイルランドということで、こちらでのセッションの様子や音楽について感じたことなどを話されていました。その中で、面白いなと思ったことがありました。

「ギターを持ってセッションに参加すると、アイルランドでは必ず「何か歌わないのか」と訊かれて困りました」

以前からギター奏者と歌についてはいくつか記事を書いてみたいと思っていましたが、今回のお話を機にこちらの記事をアップしたいと思います。

アイルランドでは、確かに多くのギター奏者が歌をうたうものです。セッションに入っているギター奏者で歌をうたわない人は、少数派ではないでしょうか。言い方を換えるならば、伴奏専門のみのギター奏者は少ない、ということです。

この傾向は、アイルランド音楽の歴史を紐解いてみることでその理由が分かるようです。

メロディーに対する「伴奏」という奏法がアイルランド音楽に取り入れられたのは、アメリカに渡ったアイルランドの演奏家たちのレコーディングがはじまりであったことは以前にも言及しました。
しかし、ギターという楽器がアイルランド音楽の世界に本格的に介入してきたのは、伴奏楽器としてではありませんでした。

最も初期の段階で大きなインパクトを与えたのは、主に1960年代に活躍したクランシーブラザーズ(The Clancy Brothers)やダブリナーズ(The Dubliners)といったフォークグループです。

ダブリナーズ
[今や伝説のフォークグループ、ダブリナーズ]

ギターを片手にアイルランドの歌をうたうスタイルで成功をおさめた彼らの影響力は大きく、その後のバンドブームにもつながっていきました。このような過程を経て、ギターはアイルランド音楽界において一気に市民権を得たのです。

つまり、ギターという楽器のアイルランド音楽におけるメジャー化は、歌と共にあったことになります。

今日のアイルランド人たちが、ギター奏者を見るとつい「歌をうたわないか」と訊いてしまうのはこのためです。
彼らにとっては、ギター奏者=シンガーなのです。

クランシーブラザーズ
[アメリカで活躍したティペラリー州出身のクランシー兄弟]

一方で、今現在伴奏者として評価の高いギター奏者たちが皆歌をうたうかと言えば、必ずしもそうではないのも事実です。

スティーヴ・クーニー
[オーストラリア人で長年アイルランド音楽におけるギター奏者としてリードするスティーヴ・クーニー(Steve Cooney)]

デニス・カヒル
[パブセッションにおいても素晴らしい存在感を示すシカゴ出身のデニス・カヒル(Dennis Cahill)]

アイルランド音楽における伴奏楽器の役割については、過去の記事でも触れました。(「アイルランド音楽に伴奏は要らない?」)伴奏というアプローチが、今後ますます存在感を示すようになるのかもしれません。

しかし、忘れてはならないのは歌の重要さです。ギター奏者に歌うことを期待するアイルランドの人々。彼らにとっては歌がそれだけ身近にあるということであり、アイルランドのミュージシャンたちを見ていると、歌と音楽が切っても切れない関係であることもよく分かります。
演奏することは歌うこと。
今後はそんな角度からもこの音楽を見つめていきたいと思います。


望月えりか

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「ヴァイオリンとフィドルの違い」を読む 「フィドラーは無教養?」編

2013.11.13 20:17|フィドル
数回にわたってお送りしている、『「ヴァイオリンとフィドルの違い」を読む』。
最終回の今日は、『「無教養?」編』と題してみました。

「ヴァイオリンは歌う、しかしフィドルは踊る」という文句がありますが、「酒とフィドラー」にも見られるように、フィドルはヴァイオリンに比べると「楽しいもの」、「愉快なもの」、「ダンスをしながら(または酒を飲みながら)弾くもの」といったイメージがつきまとうようです。

フィドルは何やら楽しげである、というこのイメージは、はたから見て、もしくはかしこまった雰囲気のクラシックヴァイオリンと比較して「楽しげだ」と見える、あくまで聴く者がそう感じる、ということなのかもしれません。
アイルランドのフィドル奏者たちは少なくとも、ニコニコ顔で「楽しげに弾こう!」ということは誰も目指していないですし、むしろアイルランドの音楽はかなり抑制のきいた曲調のものが多いようにさえ思います。

「ヴァイオリンとフィドルの違い」には、以下のような引用文が見えます。

・ ヴァイオリンの上手な人は正しい運指をマスターしている
・ フィドルが上手な人は無茶苦茶の運指で正しく弾ける

・ ヴァイオリニストは楽屋で今日弾く曲を練習している
・ フィドラーは楽屋でみんなと遊んでいる

・ ヴァイオリニストは車を道の真ん中で停める
・ フィドラーは他の車にぶつけてから停まる

・ ヴァイオリニストはヴァイオリンの他はよくわからない
・ フィドラーはフィドルのこともよくわからない


ヴァイオリニストが音楽にひたすら真面目に取り組む一方で、フィドラーは脳天気で無教養、といったところでしょうか。ステレオタイプ化もここまで来ると説得力に欠けはじめ、さすがにこれを鵜呑みにする人はいないはずです。

気になるのは、「フィドルが上手な人は無茶苦茶の運指で正しく弾ける」というもの。
「無茶苦茶な運指」というのがどんな運指なのか分かりませんが、私の知っている限り皆さん正しい運指で弾いています。アイルランド音楽の曲は、どれもヴァイオリンで言われるところの「第一ポジション」でほとんどまかなわれることは事実です。第二ポジションまで行かないと音が出せない曲もあることにはありますが、数は限られます。

また、アイルランド音楽のフィドルについて「適当にアドリブを弾く」、「フィドルは適当に弾いてもそれがかえって味になる」という解釈もあるようですが、「適当に弾く」という表現にやはり違和感を感じます。
楽譜に指示のない演奏を良しとする、多少のアドリブが存在する、ということが「適当に弾く」という表現にすり替えられているのでしょうか。

アイルランド音楽におけるフィドルについては、「無茶苦茶の運指で弾いて良い」とか「適当に弾いてもそれが味になる」といった教え方は、誰一人していないはずです。
これも、クラシックで訓練を積んだ側から見た先入観の一つなのかもしれません。

また、「アイルランドの伝統音楽」というと、「アイルランドのど田舎の農家のおじいさんがやっている音楽」という、これまた限定されたイメージ像を思い浮かべる方も、ひょっとするといらっしゃるかもしれません。
しかし、これもまた払拭されなくてはならないイメージで、今やアイルランド音楽はその人の職業や社会的地位を問わず、老若男女あらゆる人々に幅広く愛され、演奏されている音楽です。
教育の一環として取り入れている学校もあれば、大学教授、弁護士、医師、教師などの仕事に従事するアマチュアのエキスパートが、アイルランドには大勢います。

以上、「ヴァイオリンとフィドル」の引用文から見たアイルランド音楽のフィドルをテーマに記事を書いてみました。アイルランド音楽への誤解が解け、ありのままのアイルランドのミュージシャンたちとフィドル事情を、少しでもお伝えすることができれば幸いです。


望月えりか

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